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Posted by naturum at

2016年09月17日

自然塾20160917

夏の暑い時期を避けて実施した自然塾! 今回は南砺市上平地区の「桂湖」周辺で行いました。 今年は冬の積雪も少なく、桂湖の水位もとても低く、湖底に沈んでいた『桂集落』の跡まで歩いて行けるという事で午前中は森林散策、午後は旧桂集落跡地で往時を偲ぶ・・・という予定で開催しました。



今日の講師である、吹上さんと、道の駅上平で合流し、今日の講座の簡単なガイタンスをしていただき、講座開催場所である、桂湖まで車を進めました。




桂湖ダムサイトで、桂湖周辺の山々について説明を聞きました。富山県・岐阜県・石川県三県の境界が交わる山々は車社会になる前は、山越えで集落間を行き来する大切な山道もあり、住民は苦労して急な山道を往復して生活していたとの事・・・

ダムの放水口を写真に収めてみましたが、普段の水位より15~20mは低い様に見えます。







桂湖から森に入る散策路を歩くと、奥山によくある樹木が目につきます。早春に早くきれいな白い花を付ける「タムシバ」がありました。タムシバは別名、ニオイコブシと呼ばれて、花に芳香があります。
また、別名を、カムシバとも呼ばれる。漢字で書くと「噛む柴」と書き、葉を噛むとキシリトールのような甘みがするためにこの様に呼ばれ、転じて「タムシバ」と名が付いたとの事です。

同じモクレン科に「コブシ」があります。タムシバはやや標高の高いところに自生しており、栽培されることは稀です。コブシは山地から丘陵地まで分布しており、栽培されることも多い樹種です。

写真二枚目は「タカノツメ」です。タカノツメはどこででも見かけるという事はあまりなく、土壌や気候風土を選ぶ樹種です。桂湖周辺の山には稀にしか見ることができない樹種の様です。春の新芽は山菜として美味しくいただく事ができます。
葉っぱは三枚の複葉であり、五枚複葉のコシアブラとは区別できます。

写真三枚目は「コシアブラ」です。コシアブラは分布域が広く、桂湖周辺のこの山にも多く自生しています。同じウコギ科でありながら、生存戦略には相当違いがありそうです。どこでも、誰とでも生きていけるコシアブラと住む場所を選び、気難しそうなタカノツメ!

人間の性格と似た部分もありそうですね!コシアブラもとても美味しい山菜として、近年特に人気を博し、スーパー店頭にも並ぶ様になりました。







今日は、天候にも恵まれて奥山の自然をゆっくりと楽しみながら散策できました。皆さんが講義を聞いている後方には、水位の下がった桂湖が見えます。積雪が少ないと、後々まで影響が出てくるようですね。

ロケーションの良い場所だったので、参加者全員で、集合写真を撮りました。今日は吹上さん他14名が参加しています。NHKの案内を聞いた方、会員の方他、自然が大好きな皆さんが参加してくださいました。





樹木はそれぞれ特有の生存戦略を持って生きています。ホウノキは大きな葉っぱゆえに、長く葉を付けていると光合成活動が過剰になり、樹体に蓄える養分が少なくなったり、樹体が枯死したりすることもあるようで、落葉は真っ先に始まります。下層にある中低木に光を与えるために自分が真っ先に葉を落とし、中低木にも十分光を与えよう!・・・というような、美談ではどうやらない様ですね。

また、カエデの仲間は種子散布が独特で、プロペラ状の翼を持ち、種子が落ちるときにはくるくると回りながら、親木からなるべく遠くに落ちる様に工夫されています。ドングリは落ちてから、ころころ転がりながら親木から離れた場所で生きていける様に工夫してますし、樹木ではありませんが、チジミザサの様に種子を動物の毛や人の衣服にくっつけて子孫繁栄を願っているしたたかな植物もあります。
生存戦略だけ勉強してもとても面白い結果をまとめる事ができると思います。



有峰によく見られる、アガリコ状のブナの大木が森の上部にありました。おそらく、その昔湖底に沈んだ、桂集落の人々が生活するために、ブナを利用していたのでしょうね!積雪深があり、冬に雪上で伐りだしたブナから萌芽更新して、独特の樹形になったものと思います。
里山として人々に利用されていた痕跡が残る一つの証左だと思います。



散策路の終点近くに、「ニッセイの森」という企業の関係者が森づくりをしている場所があります。その森には、コブシやトチ、カツラが植えてあります。落葉が始まったカツラの近くを通ると、しょうゆを付けたせんべいを焼いたような芳香が漂っています。独特の芳香は参加者を引き付ます。



さらに歩くと、道端に「ゲンノショウコ」が花を付けています。フウロソウ科フウロソウ属の多年草・・・というよりも、薬草として知らない人はいないくらいに有名な植物です。

ゲンノショウコという植物の名前は “実際に効く証拠” という意味があり、そこから付いた名前です。



午後からは、桂集落跡まであるいて行きます。歩く前に、吹上さんが桂集落の古い写真が収められている写真集を見せてくれました。桂集落のみならず、五箇山での昔の暮らしを記録した、とても貴重な写真集です。雪深い山村の暮らしの厳しさ、人々の絆の深さ、村祭りの様子等々の写真の中に、桂集落の写真もありました。





集落跡まで歩いてくると、家々の基礎を石で組んである様子が判ります。写真の中に石を組んで積み上げて基礎とした様子が判っていただければ幸いです。桂集落には10件も無かったようで、廃村となり最後の村人が村を離れる前日に、その家の主が急死したという吹上さんのお話を聞いて切ない気持ちをいだいたのは私だけでは無かったと思います。



奥の方に家々が建っており、手前には水田がありました。その水田に水を引くためのコンクリート用水跡がはっきりと残っています。集落の一番奥には村の守り神を祀る神社があり、最近まで狛犬も残っていたとの事でしたが、水に流されたのか今は跡形もありません。



集落跡を去る時には、皆さんの心の中には桂集落の歴史が刻み込まれた事と思います。石崎さんの言葉が皆さんの気持ちを代弁していると思います。『46年経っても、生活していた時の様子が判るというのは、とても切なくなります』 (石崎談)

そうです!わずか46年前まではこの地で,桂集落で人々の営みが行われていたのです。
これから、人口減に拍車がかかりそうな日本の現状を考えると、廃村となる集落が増えてくることは明らかだと思います。



最後に桂集落跡から見た現在の桂湖の様子です。水位が極めて低いことがよくわかります。来年の雪解け頃には、集落跡はふたたび湖底にしずむかもしれません。

今日は貴重な集落跡をこの目で見ることができてとても有意義な一日でした。

ご参加いただいた皆様にはお疲れさまでした。また車を提供いただいた皆様には心から感謝申し上げます。  


Posted by tsuru at 18:09Comments(0)